なぜ「妊婦風俗嬢」はここ数年で急増したのか

数字上は好景気だが、実態は“見せかけの社会”ではないか

小野 一光
2018/01/15

genre : ニュース, 社会, 経済, 働き方, ライフスタイル
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「罪悪感は100%のうち65%くらい」

 じつはラムのように、自身の性欲が強いことを自覚し、妊娠して夫とセックスレスになったことを理由に、妊婦専門風俗店で働き始めたという女性も、少数ではあるが存在する。

 妊娠5カ月目から働き始めた37歳のエリカもそのひとりだ。サービス業の夫がいるという彼女は、20代のときに5年くらい風俗店で働いた経験がある。その後、半年ほどAVにも出演したことがあるそうだが、そうした過去は夫には知られていない。彼女は説明する。

「自分はすごくエッチだと思うんですよね。家にひとりでいて時間があると、つい大人のオモチャに手がいくんですよ。それでスマホでAVを見て慰めたりとか……。まあ、妊娠前はそれなりに夫婦生活もあったので、そんなに欲求不満になることもなかったんですけど、やっぱり妊娠してまったくしなくなるじゃないですか。そうすると性欲の持って行き場がないんですよね。だから性欲を満たしてくれておカネにもなる、今の仕事をやることにしたんです」

 夫にはパートを見つけたと話して、仕事に出ている。

「コールセンターのオペレーターをやってると話してます。疑われてる様子はまったくないですね。罪悪感は100%のうち65%くらい。家にいて身重の躰を気遣われたりしたときに、ああ、私って悪い女だなって感じたりします」

 だが、罪悪感はあっても妊婦専門風俗店での仕事を辞めるつもりはなく、さらに新たな思いまで生まれたようだ。

「結婚してから性的な仕事はなにもしてなかったんですけど、いまはお店でのプレイで相手をイカせたときに、満足感を得ている自分がいるんですよ。やっぱり自分には向いている世界のような気がするんです。だから、この仕事は赤ちゃんを産んだあとも続けたいなって。それも、できるだけ長く……」

性風俗の世界とは社会を映す鏡だ

 格差社会の末端で苦しい家計を補うために、出産への影響や性感染症への不安がありながらもやむなく働く女性もいれば、妊娠期間中の性欲を満たすためにすすんで飛び込んでくる女性もいる。そして、そんな妊婦に性的な刺激を感じる男性がいる。このいびつな需要と供給の存在が、妊婦専門風俗店という、ある種インモラルな空間を作り出しているのである。

 個人的なことをいえば、初めて妊婦風俗嬢を取材したのは2005年夏のこと。熟女・人妻系風俗店に1人だけ在籍した女の子だった。それからしばらく取材対象者は現れず、2010年前後から妊婦・母乳ママ専門風俗店が出現するようになり、ぽつぽつと妊婦風俗嬢を取材するようになった。それが2016年あたりから、在籍する女の子の数が急激に伸び、取材割合が一気に高まったとの印象がある。

 風俗嬢の取材を長く続けてきた私は、性風俗の世界とは社会を映す鏡だと感じている。その時々に出現する風俗店は、その時代の社会状況を如実に反映しているのだ。そうした観点からいえば、数字上は好景気を示している現在の日本であるが、そこでの実態は、我が身を投げ出さねばならない妊婦の増えた、経済格差に満ちた“見せかけの社会”だと断言せざるを得ないのである。